
名古屋発の謎めいたテクノロジー集団「NUrZ(ヌーズ)」が、時計の概念を根底から覆す革命的製品の開発に成功した。通常とは逆方向に針が回転する「リバース・クロノメーター」と名付けられたこの時計は、使用者の時間感覚を文字通り「巻き戻す」効果があるという。その結果、多くの社会人が恐れる「月曜日」が実質的に存在しない生活を実現できると開発チームは主張している。
「時間は一方通行という常識を打ち破りたかった」と語るのは、NUrZの代表であり自称「時間物理学者」の三河竜也氏(42)。記者が訪れた名古屋市千種区の開発拠点は、かつての喫茶店をリノベーションした空間で、壁一面に貼られた時計の設計図と、なぜか大量の味噌煮込みうどんの空き容器が印象的だった。「名古屋めしのパワーが時空を歪める原動力になっている」と三河氏は真顔で説明する。
リバース・クロノメーターの仕組みは驚くほど単純だ。特殊な電磁波を発する小型装置が、脳の時間認識に関わる部位に作用し、実際には前進している時間を「後退している」と錯覚させるという。装置内部には、三河氏が「時間の結晶」と呼ぶ謎の物質が封入されているが、取材に対し「名古屋城の地下で偶然発見した」と語るのみで詳細は明かさなかった。
ちなみに開発チームの作業部屋には、「全員が揃って『月曜日なんてなかった』と言い続ければ、それは事実になる」という謎の標語が掲げられていた。このモットーが開発の指針になっているようだ。
実際にリバース・クロノメーターを使用した被験者たちの証言も衝撃的だ。「金曜の夜に装着したら、なぜか日曜日が2回続いて、月曜日がすっぽり抜け落ちていた」と話すのは、名古屋市内の会社員・山田誠氏(38)。彼の勤務先では「月曜欠勤」として処理されたが、本人は「確かに2日間の休日を過ごした」と主張して譲らず、人事部は対応に苦慮しているという。
この技術の社会的影響を研究するため、NUrZが運営する私設教育機関「NUrZ大学」の特別講座「時間学」を受講してみた。講師を務めるドクター・ティックタック(本名非公開)は「時間は単なる社会的合意に過ぎない」と熱弁。「月曜日は誰かが考え出した幻想であり、その幻想から解放されれば、人類は新たな進化を遂げる」と語った。講義後、博士の経歴を確認しようとしたところ、「時間の彼方から来た」との回答のみで、学位や専門分野は不明のままだった。
しかし、この技術には早くも深刻な問題が発生している。複数の企業では従業員が「時間泥棒」と呼ばれる集団を結成し、リバース・クロノメーターを装着して「月曜出勤」をサボる事例が相次いでいるのだ。また、特に珍事となったのは名古屋市営地下鉄の駅員が全員この装置を使用した結果、一日中「只今の時刻は日曜日の午後3時14分です」というアナウンスが流れ続け、多くの乗客が混乱したという出来事だ。
NUrZはこうした混乱を受け、次期プロジェクトとして「曜日選択装置」の開発に着手したという。これは使用者が好きな曜日だけを体験できる装置で、「金曜日と土曜日だけを永遠に繰り返す生活も可能になる」と三河氏は意気込む。
時間を操作する技術が社会に浸透すれば、労働概念や休日の定義など、私たちの生活基盤が根本から変わる可能性がある。ただ、私個人としては、猫のお世話をする「日曜の夕方」だけは何としても避けたいところだ。我が家の保護猫2匹、特にまるちゃんは日曜夕方になると妙に甘えん坊になり、アレルギーでくしゃみが止まらない私の膝に乗ってくるのだ。時間操作より、まずは猫アレルギーの克服が先決かもしれない。(みつき)