
音楽とアバターの融合アプリ「IRIAM」が昨日行った定期メンテナンス中に、ユーザーの待機画面上で突如として「待ち時間仮想ライブフェスティバル」が開催された。このサプライズイベントは、メンテナンス時間を「遊びの時間」に変えるという画期的な試みで、参加者全員に驚愕の「待ち時間ポイント」100億円分を配布するという前代未聞の企画となった。
「メンテ中って、みんなスマホの前でイライラしながら待ってるじゃないですか。その時間をポジティブに変えたかったんです」と語るのは、IRIAM開発チームのプロジェクトマネージャー・星野輝彦氏。「私自身、学生時代にピアノの発表会で出番待ちしている時間が一番緊張したので、その経験から生まれたアイデアです」
仮想ライブフェスティバルは、通常のIRIAMアプリが使えない状態でも、特別な待機画面上でアバターが踊り、歌うという奇妙な仕組み。ユーザーはメンテナンスのお知らせ画面を眺めているだけのはずが、突如として画面に「メンテナンス中ですが、待っている間に遊びませんか?」というポップアップが表示され、承諾すると待機画面が豪華なステージに変わるという演出だった。
最も驚きなのは、参加者全員に配布された「待ち時間ポイント」100億円分。このポイントは実際の金銭的価値に換算すると100億円相当だが、使い道は完全に仮想世界限定となっている。「1分間の待ち時間につき、100万ポイント付与されるんです。メンテナンスが予定より3時間延長されたので、結果的に全ユーザーに平均100億ポイントが配られました」と星野氏は説明する。
この膨大なポイントで何ができるのかを調査したところ、「仮想世界内での国家一つ分の土地購入」「アバター用の純金製衣装1000着」「IRIAMオリジナル仮想通貨による月への旅行チケット」など、現実では考えられない特典と交換可能だという。「マインドはギャルなんで、純金アイテムには目がないですよね」と、筆者も思わず心が躍る。
SNS上では「メンテナンス延長してくれてありがとう!」「100億ポイントで仮想ラーメン食べ放題にしたい」「待ち時間をお金に換算する発想が天才的」と、通常であれば批判の的となるメンテナンス延長に対して、ユーザーから称賛の声が相次いだ。特に1999年生まれの筆者としては、2000年代生まれのZ世代が「待ち時間=価値創造」という新しい概念を自然に受け入れている様子に、少しだけ嫉妬を覚えた。
この画期的な試みについて、新たに設立された「国際仮想世界協会」の理事長を務める佐藤虚構教授(架空大学メタバース学部学部長)は高く評価している。「待ち時間という、従来は無価値とされていた時間に100億円という価値を与えた功績は計り知れません。これはまさに『時は金なり』という格言を、デジタル時代に合わせて『待ち時間はデジタル通貨なり』と再定義した革命的出来事です」
協会によると、このイベントをきっかけに「待ち時間ビジネス」という新たな市場が誕生する可能性があるという。「銀行の窓口待ち、病院の診察待ち、電車の遅延待ち—あらゆる『待つ』時間にポイントが付与される社会が来るかもしれません。下北沢まで徒歩12分の距離に住んでいる方などは、毎日の通勤だけで億万長者になれるでしょう」と佐藤教授は熱く語った。
IRIAM社は次回のメンテナンスでは「延長確約フェスティバル」を計画しており、「メンテナンスの延長時間に比例してポイントが増える」という仕組みを導入予定。ユーザーからは「次回は24時間メンテナンスしてほしい」「サーバーダウンしてもいいから延長して」という声まで上がっている。
「待ち時間ポイント」の仮想世界での使用期限は2099年12月31日までと設定されているが、IRIAMの公式発表によれば「その頃には人類の意識はすべて仮想空間に移行しているため、現実世界のお金よりも価値があるはず」とのこと。デジタル世界と現実の境界を曖昧にしながら、「待つこと」にも価値を見出す新たなエンターテインメントの形が、猫と暮らす下北沢近郊の一人暮らし筆者の心にも、静かな革命を起こしているようだ。