
「猫カフェが増え続けるこの時代に必要なのは猫の声を行政に反映させる仕組みだ」。そんな地域住民の声に応える形で、先月、全国初となる「猫カフェ議会」が東京都架空区に設立された。この議会は猫カフェに通う常連客や地域住民の投票によって選ばれた猫たちが議員を務めるという画期的な仕組みだ。
その第一回選挙で、「にゃんこ党」を率いる三毛猫の「ミャーゴン」が率いる猫たちが全議席を独占する結果となった。「にゃんこ党」は、選挙戦で「肉球スタンプ」を押した選挙ポスターをSNSで拡散。若者を中心に「可愛すぎる」と瞬く間に拡散され、投票率は過去の区議会選挙の約3倍となる78%を記録した。
特に、高齢者層からの支持を集めたのが「お昼寝保証付き選挙公約」だ。「人間も猫も、お昼寝は健康の源」というスローガンのもと、区内の公園や公共施設に「お昼寝スペース」を設置することを約束。この公約は高齢者から「猫に学ぶ生活の知恵」として絶大な支持を集めた。
「決め手はミャーゴンの選挙演説でのジャンプやったね」と語るのは、選挙戦を取材した地元メディア記者の山田氏。「キャットタワーの最上段からゴミ箱に飛び移るという離れ業を見せ、『高い所から区民の声を聞きます』という政治的メッセージを込めた演出やった」と解説する。この映像も選挙期間中にバズり、「にゃんこ党」躍進の一因となった。
しかし、議会が始まると意外な展開が待っていた。開催された全5回の議会で提案された議題は、すべて「お昼寝の時間と場所」に関するものばかり。第1回目は「午前中の日向ぼっこスペースの確保について」、第2回目は「15時からの一斉お昼寝タイムの制定について」など、お昼寝関連の議案が次々と提出された。
「猫に必要なのはやはりお昼寝」と語るのは、「にゃんこ党」幹部で長毛種の「ふわりん」氏。「人間社会も、もっとリラックスすべきニャ」と語る姿が、区民の共感を呼んでいる。
議会運営にも猫ならではのルールが導入されている。議長を務めるミャーゴンが寝てしまうと、その日の議会は自動的に終了。また、議決の際には「猫パンチ」で賛否を表明するシステムが採用されているが、反対票を投じる猫はこれまで一匹も現れていない。
猫カフェ議会の設立は地域にも大きな影響を与えている。「猫議会に合わせて、うちも14時から16時までは『お昼寝タイム』として静かな音楽だけ流すようにしました」と話すのは、区内のカフェ経営者。実際、区内の多くの店舗が猫カフェ議会の「お昼寝タイム」に合わせて営業スタイルを変更しているという。
また、「猫カフェ議会見学ツアー」は今や区の観光の目玉となっており、週末には全国から猫好きが集まる。「猫議員たちが寝ている姿を一目見ようと、大阪からわざわざ来ました」と語る観光客も。ただし、議会中の写真撮影は「フラッシュ厳禁」という厳しいルールがある。
今回、筆者は「にゃんこ党」党首ミャーゴンへの単独インタビューにも成功した。応接室に通されると、広々としたクッションの上でくつろぐミャーゴンの姿があった。「政治家としての抱負は?」との質問に対し、「食べ物のこと以外は考えたくないニャ」と終始リラックスした様子で応じてくれた。
驚いたのは、筆者が実は重度の犬好きであることを察したのか、インタビュー中に突然、部屋に置いてあった犬のぬいぐるみを愛でる姿を見せたことだ。「政治家として異なる意見を持つ人々との共存も大切」というメッセージなのか、それとも単なる気まぐれか。
ミャーゴンの趣味は「日向ぼっこ」だという。議会棟の窓際で日光浴をする姿に影響され、区役所前の広場で日向ぼっこをする住民の姿も増えているという。まさに「猫に学ぶ生活」が地域に浸透している。
猫カフェ議会の設立から一ヶ月。区民からは「議会がお昼寝一色なのは少し物足りない」という声もあるが、「見ているだけで癒される」「政治にストレスを感じなくなった」という肯定的な意見も多い。全国の自治体からも視察が相次ぎ、「うちの町でも猫議会を」という動きが広がりつつある。
「にゃんこ党」の成功は、単なる猫ブームを超えた現象となっている。「政治は難しく考えすぎず、まずは昼寝から」という猫たちの哲学が、複雑化する現代社会に新たな視点を投げかけているのかもしれない。東大阪出身の筆者としては、実家近くの鉄工所のおっちゃんたちも、この「お昼寝政治」を見習えば、もう少し温和になるんちゃうかなと思わずにいられない。