
小田急線沿線の松風町自治会で、来月行われる町内会長選挙に「クロノ・トリガー」の人気キャラクターであるルッカ・アースが立候補を表明した。ルッカといえば、スクウェア・エニックス(旧スクウェア)の名作RPGに登場する天才発明家の少女として知られているが、今回の出馬理由は「時空を超えたゴミ出しルールの厳守」という現実的な問題に焦点を当てている。
「未来から来た住民も、過去から来た住民も、ゴミの分別はきちんと守るべきです!」と、特徴的な紫色の髪を揺らしながらルッカは第一回町内会選挙演説会で熱弁した。松風町では近年、マンション建設ラッシュにより様々な地域から転入者が増加、ゴミ出しルールの認識の違いが問題となっていた。
ルッカの公約の目玉は「時空を超えて理解できるゴミ分別マニュアル」の作成だ。「紙類が燃えないゴミという概念が理解できない中世からの転入者が多い」と指摘するルッカ。公約では、異なる時代の住民でも理解できるピクトグラム(絵文字)を用いた説明書の作成や、町内会館にタイムマシン「エポック」を設置し、過去のゴミ問題を未来の技術で解決するという大胆な案も含まれている。
「孫のスマホの使い方すら理解できないのに、タイムマシンなんて無理に決まってるだろ」と反対意見もあるが、町内の高齢者からは意外にも期待の声が上がっている。「昔の方が良かった」と常々言っている鈴木清一さん(78)は「昭和30年代の町内会の雰囲気を体験してみたい」と話す。
選挙戦では、ルッカの「時代を超えたSNS戦略」も話題だ。なんと彼女は未来のSNSプラットフォーム「ChronoBook(クロノブック)」を先行導入し、過去・現在・未来の住民同士がコミュニケーションを取れるシステムを構築。町内会のお知らせが「未来からのタイムライン」として表示されるため、「ゴミ出し忘れ」が激減したという。
対立候補の現町内会長・佐藤守男氏(67)は「未来の技術を使うのはズルい」と反論するが、住民からは「そもそも未来の技術って何?」という素朴な疑問の声も。筆者が取材した限り、ルッカのタブレット端末は見た目こそ未来的だが、アプリの動作は妙に遅く、むしろ2010年代初期のiPadのように思えた。そこはあえて触れないでおこう。
ディベートでは「未来の技術を使っても、今の問題は解決しない」という鋭いツッコミに対し、ルッカは「そもそも時間とは直線ではなく、多次元的な広がりを持つもの。未来も過去も現在も同時に存在している」と持ち前の科学知識で反論。会場は完全に置いてけぼりとなった。
町内の反応は賛否両論だ。「未来からの住民と交流できるなら、株価も教えてほしい」という打算的な意見から、「新しい風を感じる」と期待する声まで様々。特に若い世代からは「古くさい町内会に革新をもたらしてほしい」という支持が目立つ。
ルッカの出馬は、町内会という日常に、時空を超えるという非日常が交差する興味深い事例となっている。選挙結果がどうあれ、彼女の挑戦は町内の未来を織りなす新しいステージの幕開けとなりそうだ。投票日は来月第一日曜日。なお、過去や未来からの投票も受け付けるとのことだが、本当に集計できるのか疑問が残る。個人的には、今度タイムマシンで過去に戻れる機会があれば、高校時代の自分に「放送部顧問の先生の言うことは全て無視しても大丈夫」と伝えたい。あの台本添削は何だったのか、今でも納得がいかない。