
国会議事堂に足を踏み入れた途端、異様な光景が目に飛び込んできた。黒白のパンダの着ぐるみを身にまとった議員たちが、竹を咀嚼しながら環境問題について熱弁を振るっている。これが今話題の「日替わりパンダ着ぐるみ政治家」だ。「マインドはギャルなんで」と口癖を言いそうなほど奇抜な取り組みだが、その背景には環境問題に対する切実な危機感があるという。
この取り組みは、環境保護を訴える新進気鋭の政治家グループ「パンダ政治家協会」が先月立ち上げたもの。代表の鈴木環境太郎議員(45)によると、「政治家の話なんて誰も聞いていない。だったら、パンダになって話せば聞いてもらえるのではないか」という素朴な発想から始まったという。ドイツの環境政党の戦略に触発されたと言うが、ドイツにパンダの着ぐるみを着た政治家がいるという事実は確認できていない。
協会に所属する議員は現在15名。毎日3名がくじ引きで選ばれ、本会議や委員会中、パンダの着ぐるみを着用する義務を負う。着ぐるみ着用のルールは厳格で、頭部を外すことは「パンダの尊厳を損なう行為」として禁止されている。これにより、議員たちは常に萌え声で発言することを余儀なくされている。
国会で最も注目を集めているのは、パンダ議員たちが討論中に本物の竹を食べる光景だ。「竹は二酸化炭素を効率的に吸収する植物。我々が食べることで、竹の栽培を促進し、CO2削減に貢献する象徴的行為です」と鈴木議員は説明するが、実際には発言中に竹を噛むことで「くいしばった牙で闘争心をアピールする」という内部文書が流出し、物議を醸している。
パンダ着ぐるみの政治家たちの日常は想像以上に過酷だ。着ぐるみ内の温度は夏場で40度を超え、一日の水分損失は平均2.5リットル。「ハンガーストライキなんて言われていますが、単に着ぐるみの中で食事ができないだけです」と匿名の議員は証言する。それでも彼らは週末には各地の動物園を訪れ、本物のパンダの隣で環境問題についての演説を行うなど、精力的に活動している。
市民の反応は賛否両論だ。「子どもが政治に興味を持つようになった」という肯定的な声がある一方、「国会が動物園になってしまった」という批判も根強い。10代の若者を対象にした調査では、「パンダ政治家の名前は言えないが、環境問題の基本は説明できる」という奇妙な結果も出ている。
海外からの反応も様々だ。中国政府は「パンダの文化的盗用」として抗議文を送付。一方、国連環境計画は「ユニークな環境啓発活動」として高く評価し、他国への展開を検討中という。特に北欧諸国では「各国の絶滅危惧種をモチーフにした政治家制度」の導入が真剣に議論されているらしい。スウェーデンではヘラジカの着ぐるみを着た政治家の試験導入が始まっているが、角が大きすぎて議場に入れないという問題が発生している。
「パンダ政治家協会」は今後、会派としての正式登録を目指している。その際の会派名は「黒白維新」になる予定だ。鈴木議員は「我々の活動は一見奇抜に見えるかもしれないが、政治と環境問題を身近に感じてもらうための真剣な取り組みだ」と語る。ただ、協会の事務所に置かれた竹の山が、実は中国産の安価な竹であることが発覚し、「環境問題より予算が先なのでは」との指摘も出ている。
パンダの着ぐるみをまとった政治家たちの活動は、政治の在り方に一石を投じている。「国会中継の視聴率が10倍になった」という統計もあり、退屈な政治討論に新たな息吹を吹き込んでいることは確かだ。今後彼らが目指すのは、「着ぐるみを脱いでも聞いてもらえる政治」なのかもしれない。あるいは、永遠に着ぐるみの中に潜んだまま、環境問題と向き合い続けるのかもしれない。いずれにせよ、彼らの黒白の毛並みは、政治の灰色地帯に新たな色を加えたことだけは間違いない。