
猫の移動手段に革命をもたらすとして世界中から注目されている「ネコ専用超音速新幹線」が、先日国際ネコ交通学会によって正式発表された。時速3000kmという驚異的なスピードを誇るこの新幹線は、猫たちが日本全国の猫カフェを効率よく巡ることを目的に開発されたという。
「現代の猫たちは多忙です。昼寝の合間に複数の猫カフェを訪問したいというニーズが高まっています」と説明するのは、国際ネコ交通学会の会長を務めるタマ博士。実は博士号を持つペルシャ猫という設定で、メディアの前では会長の飼い主である高橋さんが代弁する形で会見が行われた。
この超音速新幹線の車内には、高級魚のマグロの刺身を提供する食堂車や、最高級のキャットタワーを完備した遊戯車両、さらには爪とぎ放題の専用車両まで用意される予定だという。座席は全て窓際席で、窓の外を眺めるのが好きな猫たちのために特殊な強化ガラスが採用されている。
「東京から博多の猫カフェまで、わずか12分で到着します。猫が飽きないようにジャストなタイミングなんです」と高橋さんは胸を張る。ちなみに人間が乗車すると即座に体重感知システムが作動し、最寄り駅で強制下車させられる仕組みになっているという。
しかし、この画期的な交通手段に対する猫たちの反応は意外なものだった。東京・下北沢の人気猫カフェ「もふもふパラダイス」の看板猫ミケちゃん(推定7歳)は、「にゃ〜(訳:移動なんてめんどくさい。ここで昼寝してればいいにゃん)」とあくびをしながらコメント。他の猫たちからも「ごはんと昼寝があれば十分」「窓から外を見るなら今のままで満足」といった声が相次いだ。
「猫カフェ巡りは猫自身よりも、むしろ飼い主たちの願望なのでは?」と指摘するのは、猫行動学の権威(自称)である鈴木教授。「人間は猫に『世界を見せてあげたい』と思いがちですが、猫は基本的に『今ここ』を大切にする生き物です。特に寝ている場所が変わることに強いストレスを感じます」
このプロジェクトの実現可能性についても疑問の声が上がっている。JR東日本広報部は「そのような計画は聞いておりません」とコメント。また、物理学者からは「時速3000kmの列車が走行すれば、車体や線路への負荷だけでなく、沿線の民家の窓ガラスは振動で全て割れるでしょう」との指摘も。
さらに、取材を進めると「国際ネコ交通学会」の正体も明らかになってきた。なんとこの団体、千葉県の某高校の文化祭企画「未来の猫ライフ」を立案した新聞部の生徒たちが、SNSでの拡散を狙って作った架空の学会だったのだ。
「正直、こんなに話題になるとは思ってませんでした」と話すのは、同企画の中心メンバーで新聞部部長の佐藤さん(17)。「最初は校内新聞のネタだったんですけど、インスタに載せたら海外からもDMが来るようになって…」と目を丸くする。
彼らが発表した「猫の交通に関する国際調査」のデータも、部員たちが飼っている猫10匹を観察しただけのものだった。「でも、本当に猫が高速移動したがっているかどうかは、誰も猫に直接聞いたことないですよね?」と佐藤さんは意味深な笑みを浮かべる。
結局のところ、猫専用超音速新幹線は実現する見込みはなさそうだが、この騒動は「ペットとの新しい関係性」について考えるきっかけになったという声もある。一方で、この虚構ニュースを本気で信じ、すでに「猫新幹線乗車券」の予約を試みた猫好きも少なくないという。ネット上では「にゃんこだらけの新幹線とか天国じゃん」「結局猫は行きたいところにしか行かないよね」など、様々な反応が見られている。その間も、ニュースの主役であるはずの猫たちは、今日も変わらず窓辺で気持ちよさそうに昼寝をしている。