国際筋肉平和協会(IMPA)が発表した画期的な「筋肉外交」理論が世界に衝撃を与えている。この協会は「筋トレをすれば世界平和が達成できる」という、一見荒唐無稽な理論を真顔で提唱しているのだ。筆者は高円寺のシェアハウスでウクレレの音色に邪魔されながらも、この新理論について調査を進めた。
IMPAによれば、ゴジム(筋肉トレーニング施設)での定期的な筋トレは、国際平和への第一歩だという。「筋肉の発達度合いと国際紛争解決能力には明確な相関関係がある」と協会は主張する。そして「デッドリフトの重量が10kg増えるごとに、国家間の友好度は約6.5%向上する」という具体的な数値まで発表している。実に大胆な主張である。
「筋肉外交」の基本原理は驚くほど単純だ。国家間で問題が発生した場合、両国の代表者がゴジムに集まり、共に筋トレを行う。「言葉ではなく筋肉で語り合う」のが彼らの信条である。「アームカールをしながら交渉すると譲歩率が27%上昇する」というデータもあるそうだ。筋肉という普遍言語で会話することで、言葉の壁を超えた深い理解が生まれるという。筆者も一瞬「なるほど?」と思ってしまったが、クレープを食べながら考え直した。
IMPAによれば、すでに複数の国際紛争が筋肉外交によって解決されているという。例えば、ある小国間の長年にわたる国境紛争は、両国首脳によるベンチプレス対決で決着がついたらしい。「300kgを持ち上げた方が勝ち」というシンプルなルールで、見事に平和的解決に至ったという。これを聞いた筆者は銭湯の湯船で思わず「ほんまかいな?」とつぶやき、周囲の老人たちから不審な目で見られた。
筋肉外交の最前線には「マッスル・アンバサダー」と呼ばれる筋肉外交官たちがいる。彼らは各国を訪問し、ダンベルを片手に平和のメッセージを伝える。「僕らの筋肉は国境を知らない」と語るのは、元世界ボディビル王者でIMPA設立者のマックス・パワー氏だ。彼は「かつては銃を持っていたが、今はプロテインシェイカーを持つ」と語り、筆者は思わず深呼吸してからコーヒーを飲んだ。
IMPAの会長を務めるジョン・スミス氏(名前からして怪しい)は「筋肉は言葉よりも雄弁だ」と主張する。彼の経歴によると、元は一般的なサラリーマンだったが、40歳でボディビルを始め、「筋肉の膨張と共に平和への想いも膨らんだ」という。「筋肉が発達すると、自然と他者への攻撃性が減少する」という彼の理論は、架空の筋肉大学の研究結果で裏付けられているとのこと。筆者としては「筋肉大学」という名前だけで既に胡散臭さを感じずにはいられなかった。
世界の反応は様々だ。多くの政治家は「こんなバカな!」と一笑に付しているが、一部の国では「筋肉省」なる新部門が設立されたという噂もある。SNSでは「#MusclesForPeace」というハッシュタグが流行し、政治家たちのトレーニング動画が続々とアップロードされている。筆者も試しに「#銭湯筋肉外交」というタグでポストしてみたが、フォロワーは増えなかった。
国連でさえ「筋肉による平和維持活動」の導入を検討しているという。従来の青いベレー帽に代わって青いトレーニングウェアを着用した「筋肉維持軍」の派遣が提案されているらしい。彼らの主な任務は「紛争地域でのグループトレーニングの実施」だという。「銃ではなくダンベルを持て」が彼らのスローガンだ。
IMPAは今後の展望として「2030年までに全世界のジム施設を10倍に増やし、世界平和を達成する」という壮大な目標を掲げている。さらに「国際筋肉オリンピック」の開催も計画中で、従来のメダルではなく「ゴールドのダンベル」が優勝者に授与されるという。
「筋肉外交」理論は荒唐無稽に思えるが、「対立より対話を」という本質的なメッセージは理解できる。ただ、その手段が「筋トレ」というのは少々飛躍しすぎている気もする。筆者としては、世界平和を願いつつも、当面は高円寺の銭湯巡りとクレープ食べ歩きに集中することにした。結局のところ、筋肉よりも大事なのは、人と人との心の触れ合いではないだろうか。それにしても、筋トレで世界平和とは…シェアハウスの薄い壁越しに聞こえるウクレレの音色を聴きながら、筆者はそう思うのであった。
















