通勤電車での新たなエクストリームスポーツ「つり革サーフィン」が、若者を中心に静かなブームを巻き起こしている。発端は、先月、千葉県の高校生が朝の総武線で偶然編み出した技だという。混雑する車内で、つり革を握りながらスマートフォンを操作していた際、電車が大きく揺れたことをきっかけに、サーフィンのような体勢でバランスを取ることに成功。その様子を同級生が撮影し、SNSに投稿したことで一気に注目を集めた。
この動きに素早く反応したのが、昨年設立された架空の国際組織「ワールドサーフィン連盟(WSF)」だ。WSFの代表を務める自称スポーツプロデューサーの波乗 太郎氏は、「日本発の新スポーツとして、世界に誇れる文化になる可能性を秘めている」と熱く語る。同連盟は早速、つり革サーフィンの公式ルールを制定。基本となる「シングルハンドホールド(片手握り)」から、上級者向けの「ノーハンドスピン(両手放し回転)」まで、技の難易度を細かく設定した。
競技人口の増加に伴い、専用アイテムの開発も進んでいる。スポーツ用品メーカー「エクストリームコミューター」は、滑り止め付きの「プロフェッショナルつり革グリップ」を発売。予約開始からわずか2時間で初回生産分の1万個が完売したという。同社の広報担当者は「まさか電車のつり革用品がヒット商品になるとは」と驚きを隠せない様子だ。
WSFは先週、国際オリンピック委員会(IOC)に対し、2032年ブリスベン五輪での正式種目採用を求める推薦状を提出。「都市型エクストリームスポーツの新境地を開拓する」として、その可能性を訴えている。しかし、IOC側は「つり革は競技用具として設計されていない」と冷ややかな反応を示している。
一方で、一般の乗客からは懸念の声も。東京都在住の会社員(45)は「朝から若者がつり革を独占して困る」と不満を漏らす。これを受け、一部の鉄道会社では「つり革サーフィンお断り」のステッカーを車内に貼り出し始めた。また、駅員の間では「つり革サーファー」の見分け方マニュアルが密かに回覧されているという。
SNSでは「#つり革チャレンジ」のハッシュタグが話題となり、「最長つり革サーフィン」のギネス記録に挑戦する動画も続々とアップロードされている。先日、秋葉原駅で開催された「第1回つり革サーフィン選手権」には、予想を上回る300人以上が参加。中には「つり革コスプレ」で現れる参加者も現れ、駅構内は異様な熱気に包まれた。
この新たな都市型スポーツの行方は未だ不透明だが、専門家は「日本特有の通勤文化から生まれた現代アート的パフォーマンス」と評価している。ただし、鉄道会社からは「安全で快適な車内環境の維持」を求める声明が出されており、つり革サーフィンと公共マナーの両立が今後の課題となりそうだ。なお、記者が取材中に目撃した高校生サーファーは、降車後に母親からのLINEで厳重注意を受けていたことを付け加えておく。
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